よろず鳥報

oishiiは正義

映画「蟹の惑星」「東京干潟」

多摩川河口の干潟を舞台にした連作ドキュメンタリー

「蟹の惑星」

干潟に住んでいる生物(主に蟹)を研究しているご老人。

とくに蟹と縁のない仕事をしていたが、定年後に趣味で研究を始めて十数年。蟹の巣に石膏を流し込んで巣型を取るところを見せてくれる。小さい蟹の巣は縦型、大きい蟹の巣は横型。そんなこと知らなかったし、考えたこともなかった。

一平方メートルあたりの生息数を数えると、五年ぐらい前の半分ぐらいに減っているそうだ。泥を掘り返すと、上のほうは明るい色、下のほうは真っ黒になっている。明るい色の層は酸素を含んでいるが、この層が年々、薄くなっているという。

ご老人の仮説では、蟹が巣穴を掘ることで、干潟の泥が上下入れ替わって循環していた。生息数が減って、入れ替わらなくなってきている。そうすると、泥の下で暮らしていた生き物が、酸素がなくて生きられなくなって、結果、干潟の生きものが減ってしまう。そんなことになっているんじゃないかと。

なるほど、そうかもしれない。自然なんて、わからないことだらけだ。調べてもわからないことが多いから、面白いとおっしゃる。すぐに結果が出てこないと、イライラしてしまう自分とは対照的だなあ。

テーマ曲のように流れる、マリンバのゴルドベルグ変奏曲。あれ、いい曲だったなあ。映画のあと、もう一度、聴きたいなと思った。

「東京干潟」

多摩川の河川敷に住んでいるホームレスのご老人。

ホームレスの人が何をして過ごしているのかとか、興味もなかったし知らなかった。この方は、干潟で獲ったしじみを売って生計を立てているらしい。四時間ぐらい漁をして、獲ったしじみをぜんぶ売っても、二千円ぐらいにしかならない。最低賃金どころじゃない。

しじみは築地に卸され、料亭かどこかで、政治家の口にでも入っているんだろうと。だれが獲ったのか知ったら、どんな顔をするだろうね。自分で採ったしじみを食べたことはないそうだ。

お金が手に入ると、自転車で街へ出掛け、スーパーで缶チューハイと猫のえさを買ってくる。多摩川の河川敷に、飼えなくなった猫を捨てに来る人があとを絶たないそうで、捨てられた猫の一部を保護して、えさを与えている。ボランティアの人と協力して、避妊手術を受けさせたりもしているそうだ。

干潟の蟹じゃないけれど、多摩川の河川敷で暮らすホームレスの人もまた、干潟の泥を循環しているのかもしれない。

自分は、知らないことが多すぎる。

 東京干潟 | 蟹の惑星【公式サイト】村上浩康監督 ポレポレ東中野にて公開決定